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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2013年11月29日

応用地質株式会社

富田 正裕

応用地質株式会社は、1957年の設立以来蓄積してきた地質・地盤情報を活用した新ビジネスの展開を進めている。 電子化した資料をもとに、開発計画地の自然災害リスクや土地履歴などを説明した「土地情報レポート」、図面・台帳・柱状図・現場写真・計測結果などを位置情報にリンクさせた自社開発の地理情報システム「MAGIS(マジス)」を使った施設管理業務支援などのサービスを事業化し、公共発注者や不動産会社、ハウスメーカーなど多くの顧客との取引を拡大している。 一連のサービスの推進母体となるデータベース事業部で土地情報レポートのシステム開発を担当している富田正裕氏に、仕事への思いや新事業の現況などを聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞

入社のきっかけは東日本大震災

土木・理学分野の出身者が大半を占める同社の技術系社員の中で、富田氏は数少ない建築系の出身。大学で人の動きや作業の効率性などの情報から空間をデザインする建築情報学を専攻し、修士論文には、駅空間の様々な個所に設置された監視カメラの映像から人の流れを計測し、カメラのない個所の人の分布や動きを予測して駅舎の最適運営を提案する研究成果をまとめた。

建築設計業界ではなく、建設コンサルタント業界を就職先に選ぶきっかけとなったのが東日本大震災。翌年に卒業を控え、就職活動を行っている最中に震災が起きた。

「復興事業をはじめ安全な国土づくりに向け、大きな使命を担っている建設コンサルタントなら、社会のために仕事をしているというやりがいが実感できるのではないか。そんな業界で、自分も力を尽くしたい」という気持ちが強まり、同社の採用試験に応募した。

入社後、データベース事業部に配属。土地情報を自動で作成するプログラムの構築が最初の担当業務となった。土地情報レポートは、膨大なデータベースの中から対象となる土地の情報を抽出し、地盤の揺れやすさ、活断層の有無、液状化・浸水・土砂災害の可能性といった災害リスク、古地図を反映した土地履歴などを提供するサービス。

システム改良でより精度の高いサービスを生み出す

当初は、ページごとにデータを検索して読み込み手作業で入力していたが、富田氏は、所定欄とデータベースがリンクし、レポートを自動作成するシステムに改良した。これにより顧客からの依頼に対し、迅速にレポートを提供できるようになり、システムそのものを商品として販売することも可能となった。

データは、同社が現地でボーリング調査した柱状図や公的機関などが公開している地形図などで構成され、適宜更新される。日本全国どこの土地でもレポートを作成でき、今後は、巨大地震に伴う津波リスクの情報などの項目を付加することも検討中だ。

「地盤条件は、建物の安全性などに大きく影響し、デベロッパーやハウスメーカー、ゼネコンなどから建設地の土地情報に関するニーズは多い。しかし、これまでは土地情報レポートのような商品がなく、供給が追いついていませんでした。こうした需要に、他社に先駆け精度の高い情報サービスで応えられるのが当社の強みです」と富田氏は話す。

大学時代の知識を活かし、独自性の高い事業創出を目指す

データベース事業部ではそのほか、自治体向けにMAGISを使いクラウド技術で現場と職員との連携を図って構造物や施設を維持管理するシステムや、地盤の3次元データと連動したCIM、手書きの文字をデジタル情報で記録し、アンケートなどもリアルタイムで集計できるデジタルペンなど多角的にサービスの開発に取り組んでいる。中でもデジタルペンは、イベント企画会社やセミナー会社など建設業界以外の会社からの引き合いがあり、新たな顧客の開拓につながっているようだ。

「入社して2年に満たないですが、仕事の広がりが実感できるし、データベース事業部自体も発足して4年目の部署なので過去のやりかたに縛られることもなく、新しい事業にチャレンジできるのが魅力です。〝地球のお医者さん〟を標ぼうする会社の一員として、さらに今後、大学で学んだ建築計画や情報技術の知識を生かし、オリジナリティーの高い事業を創出していきたい」と富田氏は意欲を語る。

【取材後記】
自然災害と常に背中合わせの日本。 近い将来、首都直下型、南海トラフといった巨大地震の発生も懸念されており、防災・減災は重要な課題だ。 応用地質には、地球科学全般にかかわる課題の解決に有効な多くの知見、ノウハウ、技術が蓄積されている。 これらのデータベースを活用した土地情報レポートをはじめとするビジネスは、自社の収益に寄与するとともに、人々の暮らしを支える建築や社会インフラの安全、安心の実現に広く役立つことだろう。

[了]

本社所在地:東京都千代田区神田美土代町7番地
設立:1957年5月2日
資本金:161億7,460万円
事業内容:土木構造物および建築構造物などの建設にともなう地盤の調査から設計・施工監理にいたるまでの一連の技術業務/地すべり、崖崩れ、地震災害、風水害等の調査、解析、予測、診断、評価から対策工にいたる技術業務/振動、騒音、水質等の環境保全・環境リスクの調査、解析、予測、診断、評価から対策工にいたる技術業務/地盤・地形・環境・災害情報等、地球に関する情報の収集、加工、販売/各種の測定用機器・ソフトウエア、システムの開発、製造、販売、リース、レンタル/セキュリティー機器の開発、製造、販売

富田 正裕(とみた・まさひろ)
1987年 東京都生まれ。
2012年 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻修了
2012年4月 応用地質入社、データベース事業部配属
担当業務:開発成果等 「MAGIS開発・保守業務」「土地情報レポート業務」「デジタルペン業務」「国土強靭化関連業務」等

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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