外国人技能実習制度 第2回
2014年12月26日
建設業における外国人技能実習生の受け入れが本格化の兆しを見せている中、実際に海外の人材を迎え、成功させるためにはどうしたらよいか。検討を始めている企業も多いと思われます。「外国人技能実習生」第2回では、実習生の募集・選抜、来日後の技能向上のための計画、生活サポートなどを行い、実習生と受け入れ企業の橋渡しを行う監理団体・国際ビジネスコンサルティング事業協同組合と、同組合より実習生を受け入れた(株)ダイニッセイの取材を通じて、受け入れの準備段階から受け入れ後の技能習得の流れについてご紹介していきます。
受け入れ監理団体と送り出し機関の質が成功の鍵を握る
外国人技能実習生(以下、実習生)を受け入れるには「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。今回、取材した(株)ダイニッセイは「団体監理型」制度を選択。国際ビジネスコンサルティング事業協同組合(以下、IBCA)に、実習生募集を依頼しました。
「IBCAに決めた理由は、大手ゼネコンにも受入れ団体として認められているということ。また、外国人技能実習制度に関する勉強会で、IBCAの三谷理事長や担当者から詳しい説明を受け、同組合のフォロー体制に安心感を得たからです。
加えて、送出し機関(FIMEX.CO:ホーチミン市)を視察し、出国前の実習生たちが、日本語を学習している様子も確認しました。同社ミン社長にも会って、送出し機関も十分信頼できると確信しました。こちらでは日本人講師の他に、ベトナムに戻った実習生が、講師やスタッフを担当していました。
外国人技能実習生制度の拡大に伴い、ブローカー的な団体が増えていると聞いていたので、多少心配はありましたが、信頼できる人と出会い、安心してスタートできました」とダイニッセイ・取締役副社長 池田氏。
IBCAは、2005年5月に設立。フィリピン・ベトナム・ラオスの3ヶ国の送り出し機関と協力体制をとって、実習生を求める企業と日本での技能実習を志す現地の若者たちの橋渡しを行っています。
人材難を背景に、スーパーゼネコンも協力会社(サブコン)に実習生受け入れを推奨するようになっていますが、実習生の受け入れ窓口になる監理団体には「連続して3ヶ年以上の受け入れ実績がある」等、厳しい資格要件を定めているところが多数。その中で、IBCAは日本有数の建設会社に公認されており、信頼度の点でも申し分のない監理団体です。
IBCAの特色は、なんといっても建設系人材に強いこと。送り出し機関については、FIMEX.COをはじめベトナムの4機関と提携。能力、資質ともに優秀な実習生を多数確保できることが大きな強みです。
企業が実習生の受け入れまでの流れを簡単に説明すると、まず監理団体を通じて送り出し機関に人材の募集を依頼します。
IBCAでは、送り出し機関が選出した人材について、さらに書類選考を行い、能力・資質ともに優秀な候補生だけに絞り込みます。こうして選ばれた精鋭たちが日本企業との現地面接の場に参加できるのです。
「面接は現地で他の日本企業と合同で行います。私が第一期生の採用でベトナムに出かけた時、当社を含めて4社が参加。面接した実習生候補は30名ほどでした。“日本で働きたい”“日本の技術を学んで母国に貢献したい”と、誰もが瞳を輝かせながら意欲を伝えてくれた。できることならあの場にいた全ての候補人材を受け入れたいほどでしたよ(笑)。監理団体が提携する送り出し機関の良し悪しが、実習生受け入れの成否を決めるといっても過言ではないと思います」(ダイニッセイ・池田氏)
入国前・入国後の研修を経て、企業に配属。
日本企業の受け入れが決まった実習生は、出国までの約2カ月間、日本語の基礎(聴解・読解・筆記)をみっちり学習し、入国後は、日本語ほか日本での生活に関する知識、入管法、労基法等について約1ヶ月の講習を受けることが義務づけられています。
IBCAでは、兵庫県・淡路市に研修センターと寮を用意し、日本にきた実習生に講習を行った後、いよいよ企業への配属。面接から企業配属までの期間は、約5ヶ月〜6ヶ月程度を要します。
配属後は、監理団体の担当者が月1回以上、企業に定期訪問。技能実習の進捗や労働安全面の確認、雇用や保険に関する情報提供などを企業担当者に行うほか、実習生と面談を行い、生活指導、メンタル面を含めてのケアを実施。日本での仕事や生活に支障がないようにきめ細かくサポート。
IBCAではベトナム語堪能な通訳兼担当者がいるほか、日本永住資格取得のベトナム人を関東・九州・四国・関西地区におき、10人体制で対応。もちろんトラブル等が発生した場合には24時間対応する体制を整えています。
「当組合では、実習生と面接時から積極的に接し、お互いに強い信頼関係を構築することを何より重要に考え、日本にいる間、実習生が安心して技能実習に打ち込めるような環境整備に力を注いでいます」(IBCA担当者)。
入国後10ヶ月目の“進級試験”。技能実習「1号」から「2号」へ。
企業配属後の実習生は「技能実習1号」と呼ばれ、入国後10ヶ月間実務を通じて技能実習に就きます。その後、一定水準の技能が身に付いたことを証明する試験を受け「技能実習2号」というレベルに昇格する必要があります。
ダイニッセイでは2014年に初めて第1期生が受験を経験。しかし、初回の試験で全員が合格することは出来ませんでした。
「学科では全員が過去問題集を100%解けるよう準備はしていたのですが、実際の試験では同じ問題がほとんど出なかったそうです。日本人も即答できないような専門的な内容ですから大変です。会社をあげて、追試対策勉強会を開催しました」(ダイニッセイ・池田氏)
上司や先輩社員が問題集を実際に解き、実習生が理解しやすいように文字や絵を書き込みながら丁寧に教える。そんな光景が日々、業務終了後に繰り広げられ、その結果、追試は見事合格。全員「技能実習2号」となり、引き続き2年の技能実習を行うことが認められました。
「“2号”に進めなければ実習生たちは国に帰らなければなりません。そうならないように彼らも頑張りましたが、私たちも必死でしたよ。3年間の技能実習を滞りなく終了させ、国に帰すことが受け入れた企業の責任ですから。また、今回の勉強会で、改めて“教える”ということの基本を見直すことができ、私たちにとっても良い経験になりました」(ダイニッセイ・池田氏)。
この後も、引き続き、第3期・第4期の実習生を迎えることを決めているというダイニッセイ。企業側の育てる姿勢と、それに応える実習生たちの意欲がマッチし、外国人技能実習制度の活用に成功した1社です。それを実現に導いたのは、優良な送り出し機関及び監理団体の存在。実績・評判・双方の相性も含めて、より良い監理団体を見極めることが、重要なポイントになるといえるでしょう。
国際ビジネスコンサルティング事業協同組合(IBCA)概要
事業内容:建設業界向けの外国人実習生受け入れ業務
過去の実績:410人(ベトナム350人、フィリピン50人、ラオス10人) ※実績年数9年
建設受け入れ実績:30名(職種:とび、鉄筋施工、型枠施工、内装仕上げ施工)
本部:兵庫県淡路市富島1145 富島ビル4F
電話:0799-82-3358
FAX:0799-82-3359
設立:2005年5月10日
代表理事:三谷 展優
認可省庁:厚生労働省近畿厚生局/近畿経済産業局/国土交通省近畿地方整備局/農林水産省近畿農政局
許可区域:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県及び福岡県の区域
設立趣旨:海外取引、進出/現地法人設立コンサルティング/人材(技能実習生の受け入れ)/組合員企業のグローバルサポート
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
ベトナムでの企業面接の様子。送り出し機関FIMEX.COと監理団体IBCAの厳正な審査を通った選りすぐりの候補生たちが顔を揃えます。
面接は日本企業数社による合同で実施。採用担当者には、事前に候補生たちのレジュメが配布されます。
配属後はIBCAの担当者が月一回訪問。実習生の就業状況を確認し、メンタル面を含めたサポートを行います。
IBCAの担当者とダイニッセイの実習生たち。この日は「日本語検定を受験したい」と希望する実習生たちにテキストを持参しての説明。IBCAでは、面接段階から実習生と積極的に関わり、実習生と強い信頼関係が築かれていることが表情からも分かります。
定期訪問中のIBCAの担当者とダイニッセイの総務担当者。
IBCAをはじめとする監理団体は、実習生の入国手続き、在留資格の申請や更新等の業務や、入管法・労働基準法など法的保護に関する企業への情報提供など、実習生の在留期間すべてについて監理責任を負います。
現場を管理する上司に、実習生たちの技能習得状況を確認するIBCA担当者。
ダイニッセイが全社を挙げて行った「技能実習2号」追試対策勉強会。テキストの各ページには、先輩社員たちによる絵や図、説明がびっしり。暗記ではなく、きちんと理解できるように事細かく書き込まれています。
ダイニッセイで働く実習生たちの故郷・ベトナム。技能実習制度を利用して、日本の建設技術を学び、故郷の発展に貢献したいと考える若者が大勢います。