• HOME
  • 外国人技能実習制度 第1回

外国人技能実習制度 第1回

2014年10月24日

若者の業界離れ、技術者の高齢化等により労働力不足が深刻化する建設業界。このため、先進国の技能・技術・知識を習得し、自国に貢献したいとする諸外国の若者たちを受け入れる「外国人技能実習制度」への関心が高まっています。
政府も、建設業における外国人労働者の受け入れ期間等を拡大する緊急措置を決定。今後同制度を利用する企業は一層増えていくと予想されます。そこで、実際に外国人技能実習生を受け入れている企業と受入れ監理団体への取材を通して、外国人実習制度の現状と受け入れまでの流れについて紹介します。

現地で見た実習生の真摯な眼差しが「外国人技能実習制度」活用のきっかけに

大手・中堅ゼネコンの協力会社としてオフィスビル、商業施設、集合住宅など様々な大規模現場に携わる鉄筋工事施工会社「ダイニッセイ」(千葉県)。同社では、2013年10月に、第一期生となる外国人技能実習生(以下、実習生)を4名、2014年6月に第二期生・2名を受け入れた。理由は、若手の建設離れや技術者の高齢化等に伴う労働者不足。しかし、同社・取締役副社長の池田洋一氏は、当初、実習生受け入れについて、積極的ではなかったと語ります。

「“外国人労働者=使い捨て”というイメージがあったんですね。実際、そんな企業の噂も耳にしていましたし。そんな風な人材の使い方はしたくなかったし、ダイニッセイという会社は“純血”にこだわり、新卒や若手を一人前に育てるんだ、という思いを強く持っていたんですね。ただ、実際のところ当社も人手が足りなくなり、一定の人数を確保できないとゼネコンの要求にこたえられず、専門工事業者としての責任を果たせないという台所事情もありました。そんな時に知り合いの建設会社がベトナム人の採用面接を行うと知り、見学のために同行させてもらったんです」。

2012年、池田氏はベトナムにわたり、外国人技能実習生の受入監理団体・国際ビジネスコンサルティング事業協同組合(IBCA)が主催する面接会に立ち合い、外国人実習生たちの姿を目の当たりにして、受け入れを前向きに検討するように考えが一変したといいます。

「彼らの“日本で働きたい”という純粋さや勤勉さ、必死さなどに直接触れ、彼らを新入社員のようにしっかり育ててみよう、という気持ちになったんです。実際、入社後の彼らの働きぶりは、私たちが期待した通りのものでした」。

ダイニッセイでは、毎年5人〜7人の新卒採用を行っており、その教育体制が出来上がっていること、さらに現場に出るまでの間、自社工場(加工場)で実習生を教育できるという環境も幸いし、第一期生・第二期生ともに日本の新卒社員と変わらぬ速度で仕事を覚え、すでに同社にとって、なくてはならない重要な存在になっています。

持ち味の勤勉さを発揮し、大手ゼネコンの現場で活躍中!

現在、第一期生4名のうち2名が大手ゼネコンの現場に配属。開発が進む千葉県某駅近くの大規模マンションプロジェクトで、先輩社員15名の指導のもと日々、技術の習得に励んでいます。「もっと日本語を覚えて、技術をどんどん吸収したい」と笑顔で答える彼ら。ゼネコンの担当者からも「真面目でよく頑張ってくれている」と、高い評価を受けています。また、現在、自社工場に勤務する二期生の2名も、間もなく現場デビューすることが決定しています。

彼らが日本に来た動機は「家族を養うため」「建設の技術を身につけ、母国の役に立ちたい」「母国に帰ったら日本で学んだ技術と日本語のスキルを活かして日系企業で働きたい」などいずれも前向きなものばかりです。なみなみならぬ覚悟と、滞在期間中に学べるものはすべて吸収しようとする貪欲さが、彼らの成長を後押ししているといえるでしょう。

ベトナム人は“勤勉で手先が器用”といわれますが、取材した実習生たちを見ていると、まさにその通り。池田氏も「同年代の日本人と比べても負けない習得力がある」と話します。また、業務だけでなく、日本語の理解を深めるために“日本語検定”を自ら目指すなど、意欲・やる気は、日本人より勝っていると思えるほどです。 「私たちが真剣に教えれば、その思いに応え、頑張る。その姿勢は、私たちにとっても良い刺激になっています」(池田氏)

仲間・家族として接し、一人前の技術者に育て、母国へ送り出したい。

会社近くに一軒家を借りての共同生活。 食事は日本人の社員も利用する寮の食堂を利用しますが、なかには日本食に慣れない実習生も。そこで、ハローワークを通じて、ベトナム料理をつくる調理スタッフの募集も行っているとのこと。

「外国人技能実習制度」の決まりにより、最長3年間は母国に帰ることができない実習生たち。母国から遠く離れている彼らに、せめて食事だけでも慣れ親しんだ味を食べさせてあげたいという心配りによるものです。

「自分に置きかえて考えたら、3年もの間、異国のご飯だけしか食べられないなんて、それだけでもかなりのストレスになりますからね(笑)」。

人材不足を補うためのコマではなく、自分たちの仲間・家族として公私ともに温かく見守り、可能な限りのフォローを行いながら、技術を教え、育て、母国に帰す。それが迎えた側の役目であり責任と考え、全社員が同じ気持ちをもって日々彼らに温かく接し、仕事を共にしています。
一方、実習生たちは、日本での仕事・生活、ダイニッセイという会社に対してどのような印象を抱いているかを尋ねると「時間やルールを守り、真面目で丁寧な仕事をする姿勢が素晴らしいと思った。仕事もとても丁寧に分かるまで教えてくれる」「業務中は一切ムダ口を叩かない反面、オフの部分ではみんな気さくでやさしく接してくれる。花見や地引網体験など、日本ならではのイベントにも参加できたこともいい経験です」と、会社・実習生のイイ関係が築かれていることが伺えます。

「例えるなら、中学や高校のクラブ活動のようなものですね。いずれは卒業していくけど、毎年、新しい実習生がやってきて、また1から育てていく。彼らがベトナムに戻った時、母国の建設業の第一線で活躍できるよう、私たちが教えられる精一杯のことをしてあげたいんです。将来、日本のゼネコンが現地で受注した物件に、私たちが育てた実習生が関わって母国の発展に寄与してくれたら、これ以上うれしいことはないです」(池田氏)。

次回は、ベトナムでの面接、出国・入国手続きや入国後の生活研修から、配属後の実習生の相談、定期訪問、技能実習計画まで様々なフォローを行う受入れ監理団体の一つ「国際ビジネスコンサルティング事業協同組合(IBCA)」の活動内容を通じて、外国人技能実習制度の仕組についてより詳しくご紹介していきます。

外国人技能実習制度 第2回 »

株式会社 ダイニッセイ・会社概要
本社:千葉県市原市五井8854
設立:1973年5月(1988年7月 現社名に変更)
資本金:1000万円
代表:代表取締役 池田愼二
従業員数:62名(男子60名・女子2名)/協力業者従業員数100名(2014年10月現在)
事業内容:鉄筋工事に関する一切の施工請負

「外国人技能実習制度」とは
開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、諸外国の青壮年労働者を一定期間、さまざまな産業の企業が受け入れ、日本の技術・技能・知識の修得を支援する「外国人技能実習制度」。なかでも、人材不足が著しい建設業においては、政府が「当面の一時的な建設需要の増大への緊急かつ限定的措置」 として、技能実習生の在留資格(3年)に加えて、新たに「特定活動」による在留資格(2年)を設け、就労可能期間を5年に延長。技能実習終了後の帰国者には許可されていない再入国を許可し、「特定活動」を最大3年まで認めることを決定した(時限措置の期間は2015年度初頭から2020年度までの予定)。

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

入社間もない頃の第一期実習生4人。制服を身に付け若干緊張した面持ちだ。

現場配属前に自社工場(加工場)にて先輩社員の指導のもと、業務に必要な基礎をみっちり学ぶ。

千葉県にある大規模集合住宅の建設現場では、現在2名の実習生が配属されている。

「日本語をもっと覚えて、高い技術を身に付けたい」。表情は真剣そのもの。

「日本で技術を身に付け、母国に貢献するために来日した」。真面目に業務に取り組む姿はゼネコン関係者からも高評価。

初の安全大会に出席し、一人ひとり自己紹介。

社内イベントのお花見の一コマ。すっかり溶け込んでいる様子が表情からも見て取れる。

毎日の食事は寮にて。

実習生たちが暮らす一軒家。時には上司や先輩社員も顔を出し交流を深めています。